
人々の安全を守り、業務を円滑に遂行するために、ビデオ映像、カードの記録、入退室状況などのデータが活用されています。 しかし、データがカメラ、リーダーやサーバーから送信後、適切なユーザーのみがアクセスしていることをどのように確認することができるでしょうか?
フィジカルセキュリティシステムが広範囲に接続されるにつれて、機密情報はより遠くに転送され、より多くの場所に存在することになります。そうしたデータを保護することは、プライバシー保護、信頼性の確保、サイバーレジリエンス能力を維持するために不可欠です。
そこで暗号化が重要となります。暗号化は、フィジカルセキュリティデータがサーバーに保存されている場合でも、ネットワーク上で転送されている場合でも、権限のない第三者に読み取れないよう保護する基盤テクノロジーです。
電子ブック
フィジカルセキュリティにおける暗号化とは何でしょうか?「暗号化」とはどういう意味でしょうか?
暗号化の定義:暗号化は、許可されたユーザーのみが読み取れるようにデータを符号化(エンコード)するプロセスです。暗号化鍵を使用して、読み取り可能なプレーンテキスト(平文)をアルゴリズムで処理し、判読不可能な暗号テキストに変換します。対応する復号鍵を持たない第三者がビデオ監視映像や入退室記録にアクセスしても、判読不能な文字列が見えるだけです。
フィジカルセキュリティデータの保護が必要な理由
暗号化を、データ自体を保護する鍵と考えてください。アクセス権限は、誰がファイルを開けるかをコントロールするのに対し、暗号化は、その内容を読み取れるかどうかをコントロールします。 データベースに侵入して抜き取られたカード保有者の記録や、侵入者が手に入れたビデオ映像は、アクセス防御を突破しただけでは判読不能なデータに過ぎません。復号化鍵がなければ中を読み取ることは不可能になります。
データを多重保護することで、深刻な事態となることを防止できます。インシデント後、担当者がカード保有者の動向をレビューしていたときに、誰かがカード保有者記録を不正にエクスポートしたことに気が付いたケースを想定してください。データが暗号化されていない場合は、担当者は記録への改竄の有無を確認し、アクセスログに不審な欠落がないかの調査に、さらに時間を費やす必要があります。暗号化によってデータへの信頼性が担保されるので、管理や保全過程に関する懸念を払拭し、担当者が調査を円滑に進めることができます。
暗号化せずに記録を保存した場合、コンプライアンスへの対応が複雑になる可能性があります。企業は、機密情報をどのように保護しているのかを問われています。監査員から、ビデオ映像、カードの記録、入退室管理データをどのように保護しているか尋ねられた場合、暗号化はその対策として最初に挙げられるもののひとつです。暗号化は、データの保存、共有、システム間での転送といった、データのライフサイクル全体を通じてデータが保護されていることを示します。
これから、暗号化がどのようにデータを保護するのか、その仕組みを詳しく見ていきます。
暗号化はどのように機能しますか?
ビデオ動画ストリームがサーバーに送信される時や入退室イベントがクラウドに同期される度に、それらの情報はネットワーク上で転送されます。暗号化によって、許可されたシステムのみが情報を読み取れるようにすることができます。その仕組み:
- 平文 - ビデオ映像ファイル、データベースのレコード、メッセージなど、人が読み取れる元のデータ
- 鍵 - データを暗号化し、再び復号するために使用される値
- アルゴリズム - 鍵を使用して平文を判読不能なデータに変換するための数学的な処理
- 暗号文– 暗号化によって変換された結果で、それ自体では意味を読み取ることができないデータ
暗号化の強度を決める2つの要素: 選択するアルゴリズムと、暗号鍵の保存、ローテーションや共有をどれだけ適切に管理するかの2つです。
すべては暗号鍵にかかっています。復号化鍵を持つ許可されたユーザーのみがデータを読み取ることができます。それが、暗号化されたシステムがネットワーク上にデータを安全に転送する方法になります。サーバーに転送されるビデオ映像ストリームや、クラウドと同期される入退室イベントは、権限がある受信者だけが復号できる形式で転送されます
フィジカルセキュリティ運用において「暗号化される」とは、何を意味するのでしょうか?
駐車場でのインシデントを1本のビデオ映像で捕らえます。その映像データはカメラから転送されてサーバーに到達し、捜査対象となり、さらにセキュリティ部門から警察当局に送信されます。その途中で、ネットワークを通過し、ストレージに保存され、アプリケーション間を移動します。
データが保護されていない場所が1つでもあると、機密情報が想定してない第三者の手に渡る可能性があります。そのため、暗号化はすべての段階で実行され、フィジカルセキュリティシステムがデータを生成するあらゆる場所にまで暗号化の範囲を広げる必要があります。
ほとんどのフィジカルセキュリティ部門では、意識することなく日々の業務で暗号化に依存しています。
- ビデオ監視映像 - ライブ映像、アーカイブとして保存時、捜査のための共有時
- 入退室管理データ - カード保有者の記録やリーダーとコントローラーの間で送受信される認証情報を含む
- クラウドに接続されたシステム- オンプレミスのインフラとクラウドサービスの間で情報が送受信される場合
- モバイル通信- 移動中の発着信、メッセージ、アプリの通信の保護
これが、セキュリティシステムそのものを保護する実際の取り組みです。通信、サーバー、データなど、フィジカルセキュリティシステムのすべての側面を保護することです。セキュリティエコシステムの一部で侵害が発生した場合でも、接続されたシステムのサイバーレジリエンスの維持に求められるのが一貫した保護対策です。

暗号化がサイバーレジリエンスに不可欠なのはなぜですか?
サイバーレジリエンス能力は、何か問題が生じた場合に発揮されます。例えば、担当者が調査中に攻撃者がネットワークに侵入し、ビデオ映像が保存されているサーバーや入退室管理システムのバックエンドのデータベースにまで到達されたとします。暗号化されていることで、このインシデントのダメージは、はるかに低減されます。攻撃者が持ち出したデータは、復号鍵がなければ何の価値もありません。
ここでの重要なポイント暗号化は、フィジカルセキュリティシステムにおけるサイバーセキュリティとして重要な役割を果たします。これは、ほとんどの防御策が攻撃者の侵入阻止を目的としたものだからです。暗号化は、万一、データが盗み出された時に保護するものです。
2026年版『Genetec フィジカルセキュリティ状況レポート』では、エンドユーザーの44%が、データストレージの保護をサイバーセキュリティ対策の一環として実施していると回答しています。 41%が同様にシステムを不正アクセスから保護すると述べています。暗号化は、この両方の中核となります。
この追加の保護レイヤーは、多くの組織にとって重要な次の5つの成果につながります。
- 機密性– ビデオ映像や入退室管理記録を、許可されたユーザーだけが読み取れる状態に保ちます。
- 証拠の完全性 – ビデオ映像やアクセスログが改竄された場合に、はるかに検出しやすくなります。
- 監査とコンプライアンス– GDPRやNIS2などの規制では、監視カメラやリーダーが収集する個人データが適切に保護されていることが求められます。
- プライバシー保護– カード保有者の詳細情報や人事情報を安全に保護します。
- リスクの軽減 – 盗まれたビデオ映像や認証情報も、読み取ることができなければ、その価値は大幅に低下します。
暗号化はゼロトラストネットワークアーキテクチャとどのように連動しますか?
暗号化でデータを保護することは、信頼性を確保するためのひとつの要素です。もうひとつは、ネットワーク上の各デバイスを検証することです。
ゼロトラストの取り組みは、この後者を基本としています。つまり、デバイスが信頼できるように見えても、決して信用せずに常に検証するという取り組みです。ネットワーク上のデバイスが、ビデオ映像フィードへのアクセスを要求していると想定します。ゼロトラストとは、デバイスがシステムに初めて要求するときだけでなく、要求の度に毎回検証する必要があることを意味します。
接続が検証された後でも、それを通過するデータは、未許可のデバイスやユーザーには読み取れないままにする必要があります。それが暗号化の役割です。ゼロトラストはアクセス要求を継続的に検証し、暗号化は検証されたユーザーとデバイスの間で共有されるデータを保護します。
つまり、暗号化とゼロトラストを連携することで、不正アクセスによる影響を低減できます。これらの組み合わせにより、1台のデバイスやひとつの接続が侵害された場合でも、環境全体で機密データが漏洩するリスクを低減できます。
トラストセンター

すべての暗号化が同じ方法でデータを保護するわけではありません。データはストレージでの保存中、ネットワーク転送中、またはその両方で暗号化されていますか?暗号鍵は1種類ですか、2種類ですか?さまざまなタイプの暗号化を理解し、それらを組み合わせる方法を理解すると、セキュリティ上の脆弱性を把握しやすくなります。
暗号化にはどのような種類があるでしょうか?
暗号化方法は、暗号鍵の処理方法やデータを保護する範囲が異なり、方式により固有の長所とトレードオフがあります。ここでは、一般的によく使用される次の4つの暗号化方式について説明します。」
共通鍵暗号
共通鍵暗号化は、暗号化と復号化の両方に1つの暗号鍵を使用します。暗号鍵がひとつなので高速に処理可能で、リアルタイムで検証が必要なアプリケーションに適しています。例えば、カードリーダーとコントローラー間の接続は、認証情報をほぼ即時に検証する必要があるため、共通鍵暗号化に依存することがよくあります。
Advanced Encryption Standard(AES)などの共通暗号鍵アルゴリズムは、大量のデータの暗号化する場合にも広く使用されます。処理が高速でハードウェアによって高速で簡単に実装されます。トレードオフとしては、暗号鍵の配布リスクが存在します。暗号鍵を保持する人は誰でも、大量のデータを復号化できるため、暗号鍵を慎重に共有して保存する必要があります。
公開鍵暗号
公開鍵暗号化では、数学的に関連付けらたれ2つの異なる暗号鍵を使用します。データを暗号化する公開鍵は、誰にでも公開できます。データを復号化する秘密鍵は、それを保持するデバイスの外部に出ることはありません。
秘密鍵がデバイスから出ることがないため、公開鍵暗号化により、システムは秘密鍵を事前に共有することなく信頼を確立できます。ビデオ映像を特定の捜査員と安全に共有する必要があるとします。システムは、その捜査員の秘密鍵にリンクされた公開鍵を使用してデータを暗号化するため、捜査員だけが暗号化を解除できます。
これは、デジタル証明書、デジタル署名、公開キー基盤(PKI)の基礎となるアーキテクチャです。公開鍵暗号化は共通鍵暗号化よりも処理が遅く、より多くの計算能力を必要とすることに注意してください。
多くのシステムは両方の方法を組み合わせて使用しています。公開鍵暗号化で接続を確立して暗号鍵を交換し、共通鍵暗号化で大量のデータの暗号化を処理します。
保存中の暗号化と転送中の暗号化
暗号化では通常、保存中または移動中の2種類の状態のデータを保護します。
- 保存中– サーバー、ストレージ、クラウドに保存されているデータ。例えば、アーカイブされた調査ファイルや、ナンバープレートの読み取りログなど
- 転送中– ネットワーク上で転送されるデータ。例えば、訪問者とオペレーター間のインターフォン通話や、モバイルアプリで表示される監視カメラのライブ映像など
強固な暗号化戦略によって、保存中と転送中の両方のデータを保護します。データがストレージ保存では保護されていても、転送中に保護されなければ攻撃者に悪用される可能性があります。
エンドツーエンド暗号化とは何ですか?
エンドツーエンド暗号化は、送信元のデバイスから受信先のデバイスまで、データが転送される全経路に渡り保護します。データを中継するサーバーを含め、経路上にあるものは何もコンテンツを読み取ることはできません。
フィジカルセキュリティ部門にとって、ビデオ映像やデータが外部の捜査員や警察当局と共有されるときが重要です。機密情報が自社のネットワークの外に転送される際、エンドツーエンドの暗号化によって、相手先までにネットワーク経路上も保護されます。
暗号化はどこから始めればよいのでしょうか?
暗号化をどこから、どのように開始すべきかわからない場合でも、いくつかのポイントを考慮して進めることで大きな効果を得られます。
- 収集しているデータの把握– ビデオ映像、入退室イベント、カード保有者の記録をすべて洗い出し、それぞれのデータが第三者の手に渡った場合に、何が起きるかを検討します。
- 適用される規制の確認 – 各種データ規制は、データの種類や地域によって異なります。 適用される規制や要件を把握することで、暗号化、データ保持期間の制限、アクセスルールをシステムのどこに適用すべきか判断できます。これがまさに、監査員が求める文書の一部となります。
- システムを構成するツールやプロバイダーの確認– 保存中と転送中の両方でデータが暗号化されていることを確認し、暗号化をセキュリティ戦略の中核として位置付けているプロバイダーを選択します。
暗号化は、技術的な側面だけでなく、人が求める基本的なニーズである『信頼』にも応えるものです。 システムに情報が保存されているカード保有者、訪問者、従業員は、自分のデータが保護されることを期待しています。サイバーリスクが高まり続ける中で、暗号化は信頼性の維持に欠くことができない重要なテクノロジーのひとつです。システムがより広範囲に接続されていく状況で、これが、データを保護し、サイバーレジリエンスを構築する手段となります。